・武蔵野の自然と和せる師の歌碑よ「千代乃八千代」と苔むすまでも 宇藤千枝子
・歌碑かこむ個性持つ銘石(いし)師を慕う歌友(とも)らの姿おのず重なる 宇藤千枝子
・はろばろと武蔵野に咲く石楠花は梢の風を潮騒ときく 宇藤千枝子
・晩年を師の歌碑建立にめぐり逢う奇縁・幸運と八重の花々 宇藤千枝子
・よく耐えた天から届く夫の声「ボクの妻らしく送ってくれた」と 北 伴
・店員に背中押されてバーゲンをまた買いたるや体はひとつに 北 伴
・若き日の筆名ゆかしこの日より若がえりとは許されるかな 岡 大人
・雨降れば傘と酸素をもちたるに街は晴れたり息もはれたり 岡 大人
・米寿の坂をのぼりしや桜咲く真下に見ゆる人生の花 大久保京子
・初雪の窓を飾れるうれしさもまじかの厳冬吾が身に凍みる 大久保京子
・頻繁に地球マグマおこりだしいつか吾らも宇宙の星と奈良む 大久保京子
・冬枯れの朝日眩しき雑木林柴犬(しば)の背光て寒さやわらぐ 飯塚彰
・サクサクと柴犬と奏でる二重奏下肢にも優し落葉の絨毯 飯塚彰
・ご飯つぶ一つ残さず召し上がる強き姿勢に歴史見るなり 飯塚彰
・離さじと手を握りしむ人の目は童女のような戯れに満つ N・遊
・昨晩も亡き人たちの夢を見たいつでもわれは気づかれず居る 長島義剛
・冬めく日屋根に上がりて見る山は未来を思うよすがとなれり 長島義剛